今回は、
残業手当の請求に関する判例を紹介します(つづき)。
第二 事案の概要
本件は、原告らがその雇用者たる被告に対し、被告の採用する時間外及び深夜労働(残業)に対する割増賃金(残業代)の計算方法は労働基準法(以下「労基法」という。)三七条一項、同法施行規則に違反しており、適法な計算方法によれば割増賃金(残業代)の未払があるとして、賃金請求権に基づき右未払金の支払を求める事案である。
一 争いのない事実
1 被告は主として一般路線貨物自動車運送業を営む株式会社であるが、原告らはいずれも被告の従業員であり、昭和五九年三月一六日から同六二年三月一五日まで、原告吉川正吾、同早稲田清治、同宮沢富夫、同近藤明、同山田卓郎、同伊藤正郎、同吉沢弘善は運行の職務(路線、ローカル、フェリー運行車に乗務する職務)に従事し、その余の原告らは運行以外の事務、現業、集配等の職務に従事した。
2 被告は、昭和五九年三月一六日改正の給与規程(本件給与規程という)二四条において、時間外勤務手当(残業代)及び深夜勤務(残業)手当の一時間当たり賃金を次式により算出するものとしている。
時間外勤務手当(残業代)
(本人給+付加給+調整加給÷月間所定労働時間)×1.25+(職務給+能率給)÷月間総労働時間)×0.25
深夜勤務(残業)手当
(本人給+付加給+調整加給)÷月間所定労働時間×0.25+(職務給+能率給)÷月間総労働時間×0.25
被告における一日の所定労働時間は八時間であり、一年間における一か月平均所定労働時間は一九〇時間である。
3 職務給
本件給与規程一一条によれば、職務給は職員の従事する職務内容を運送、運行に区分し、「職務給表」により運送については業績給を、運行については乗務本給を支給するものであるが、同規程細則3によれば、その具体的計算方法は以下のとおりである。
(一) 業績給
(1) 店所を勤務地別に別紙店所区分表のとおりa~eに区分し、各人の運送の職務を別紙資格要件表のとおり細分したうえ資格要件に従って振り分ける。
(2) 店所単位の物的生産性に基づき次式により業績指数を算出し、右指数によって別紙職務給表のとおり業績ランクをS、A、B、C、Dに区分する。
(業績指数算出式)
店所取扱重量×部門係数÷店所総労働時間×店所係数×個別総労働時間
ただし、一か月の出勤及び休日出勤日数(出勤等日数という)が二四日に満たない場合は、右の業績指数を出勤等日数/二四に置き換えて業績ランクの算定を行う。
(3) 業績給の支給金額は、(1)、(2)による勤務地別店所区分、職務別資格要件、業績指数により別紙職務給表に定める月額を支給する。ただし、一か月の出勤等日数が二四日と異なる場合は、右の月額を二四で割り、出勤等日数を掛けた金額を支給する。
(二) 乗務本給
(1) 店所を勤務地別に別紙店所区分表のとおり、a~eに区分し、各人の職務によって資格要件を運転士と見習運転士に振り分ける。
(2) 各人の運転距離及び荷作業重量に基づき次式により業績指数を算出し、右指数によって別紙職務給表のとおり業績ランクをS、A、B、C、Dに区分する。
(業績指数算出式)
運転距離(高速道粁+一般道粁×1.75)+荷作業重量(荷積屯数×15.00+荷卸屯数×10.00)×係数
ただし、一か月の出勤等日数が二四日に満たない場合は、右の業績指数を出勤等日数/二四に置き換えて業績ランクの算定を行う。
(3) 乗務本給の支給金額は、(1)、(2)による勤務地別店所区分、職務別資格要件、業績指数により別紙職務給表に定める月額を支給する。ただし、一か月の出勤等日数が二四日と異なる場合は、右の月額を二四で割り、出勤等日数を掛けた金額を支給する。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、
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